一人ひとりの感性に寄り添い、描く喜びを分かち合う絵画教室

三原色で始める油彩画
<作例>

このカリキュラムでは、安価で丈夫なMDFボードを下地に使用し、基本の3色+白・黒のみのシンプルな構成で、豊かな色彩と重厚な空気感を生み出すプロセスを学びます。
今回、講座の開講に合わせて、作例を制作しましたのでご紹介します。

はじめに


モチーフの写真

・今回使用したモチーフです。
(なお、写真を元に描くのではなく「実物」を見て描きます)
今回の作例では少し複雑なモチーフにしていますが、実際の講座では、より身近なものを、単体から描き、徐々に数を増やし、複雑にする、と言う段階を踏んで行きます。
陶器、ガラス、金属、布等、様々なモチーフを、ひとつひとつの「描き方」から指導します。


限られた色を組み合わせて、自分だけの色を作り出すプロセスは、驚くほど無心になれる時間です。
一筆ごとに形が立ち上がっていく感覚に没頭することで、日常の忙しさを忘れ、心が整っていく心地よさを感じていただけることでしょう。


💡 油絵というとキャンバスに描かれているイメージが強いですが、昔から様々な種類の板材も多く使われて来ました。このコースでは、市販のMDFボードを使用します。木材繊維が油絵具の油を適度に吸うことで見た目の乾燥を早め、滑らかな表面は筆を傷めにくいです。一般的なベニヤ板のような粗さもなく、化粧板による加工を施したシナベニヤよりも安価。写実系絵画の小品の制作や習作には理想的な素材と言えます。

制作の手順


Step 1 準備と下書きのトレース

MDFボードに直接いきなり描くのではなく、まずはコピー用紙等に下絵(エスキース)を制作します。明暗をイメージして下絵を作ることが、後の着彩での迷いを防ぐ鍵にもなります。仕上がった下絵の裏面を木炭で塗りつぶして「カーボン紙」の代わりとし、ボールペンや、先端をよく尖らせた2H程度の硬めの鉛筆等を用いてボードへイメージを転写します。
なお、オンライン教室ではこの転写用の「線画」をこちらで用意することも可能です。

下絵の作成と、線画をボードにトレースする様子

木炭によるバリュースケッチ
Step 2 明暗の設計(バリュースケッチ)

転写した線画を元に、木炭やチャコールペンシルで「光と影の設計図」をボードに実際に描き込みます。この段階でモチーフの位置関係を微調整し、描き終えたらフキサチーフ(定着液/スプレータイプのものが多く市販されています)で定着させます。

💡 ポイント:フキサチーフ(Fixative/フィクサチーフ・フィキサチーフとも呼ばれます)の成分は、木材繊維の目止めの役割も果たします。これにより、将来的に絵具の油が木材を侵す心配を軽減できます。
反対に、既に地塗りの施されている市販のキャンバス等にフキサチーフを塗布することは、将来的な絵具の剥離につながるため、お勧めしません。


Step 3 三原色による混色と着彩

使用した絵具は、H社製のピロールレッド(赤)・イミダゾンイエロー(黄)・フタロアニンブルー(青)の三原色とチタニウムホワイト(白)・アイボリーブラック(黒)のみ。
このうち赤・黄・青の三色は、試験的に初めて使用した比較的安価な絵具ですが、クセが強すぎることがわかり、やや苦戦をしました(苦笑)。
(実際の講座では別の三色の絵具を使用します)

絵具の色は、混ぜると明度・彩度が落ちて暗く鈍い色になります(減法混色または減算混色と呼びます)。
この理論を基に、三色を混合して深い茶色や複雑な中間色を作ります。ボードの地色を活かし、まずは暗部から徐々に描き進めて行きます。

無数にある絵具の中から色を選ぶ必要はありません。三原色というシンプルな出発点だからこそ、色との対話を純粋に楽しむことができます。
複雑な現代だからこそ、このシンプルなメソッドで表現の原点に立ち返る贅沢を味わってください。

三原色の混色の様子とボードへの着彩

質感描写と完成
Step 4 質感の表現と細部の仕上げ

背景を意識的に暗く抑え、モチーフをドラマチックに浮かび上がらせます。布や綿棒等でのぼかしや、厚塗りによる反射光の表現など、多彩な技法を駆使します。最後は面相筆などの細筆で、ハイライトやエッジを詰め、画面全体のバランスを整えて完成です。

鮮やかすぎる色を使わず、三原色から生まれる落ち着いた色調は、飾った場所の空気を穏やかに変えてくれます。
自分で描き上げた、深みのある静物画を眺める時間は、暮らしの中に静かな安らぎをもたらしてくれるでしょう。


完成作品

<完成作品>
A4サイズのMDFボードに油彩


【地塗りと下地についてのコラム】

市販の油彩キャンバスは一般的に白い地塗りが施されており、油を吸収しにくい構造です(現行多く売られている<油彩/アクリル兼用>とされるものは、いくらか吸収性が高い)。これは、油絵具の乾燥の遅さを画面上での混色やグラデーションづくりの面で有利に利用することや、キャンバスや板等の基底材の保護の意味でも重要な意味を持ちます。一方、17世紀オランダ絵画などでは、板に膠等での目止めだけを施して、直接描く手法も多く見られました。19世紀ポスト印象主義の画家トゥルーズ=ロートレックや、ナビ派のモーリス・ドニらは、しばしばカルトンと呼ばれる厚紙に油彩で描いています。
この講座では、あえて複雑な下地作りを省き、カルトンに性質の近い、木質板の中間色(茶色)を活かした合理的かつ格調高い描き方を実践します。

描くことで整う、自分だけの時間

油彩画は、絵具の重なりを楽しみながら、時間をかけてじっくりと対象と向き合う芸術です。
特に三原色の混色は、色の変化を筆先で感じる「対話」のようなもの。
完成を急がず、絵具の感触や筆の抵抗を感じながら無心に筆を動かすひとときは、何にも代えがたいヒーリングの時間ともなるでしょう。
美術ラボでは、技術を学ぶだけでなく、あなたの感性を解放し、心が満たされる体験を提供したいと考えています。

あなたも本格的な油彩画を始めてみませんか?

美術ラボのオンライン教室では、このメソッドを少人数性により丁寧に指導致します。

より詳しくお知りになりたい方はこちら
^